POINT
ロルフ・フェルバウムの存在無くして、生まれなかったパントンチェア
デンマーク出身のデザイナー、Verner Panton(ヴェルナー・パントン)がキャンチレバーのプラスチック製の椅子を開発したのは1950年代後半のことですが、当時その美しいデザインの椅子を製品化できる製造元はありませんでした。パントンのアイデアにもともと興味を持っていたVitra(ヴィトラ)社の創業者であるウィリ・フェルバウムは、息子のロルフとヴィトラの生産開発責任者であるマンフレッド・ディーボールドからの報告を受け、この椅子の製品化を決意します。そして1963年にヴィトラとヴァーナー・パントンは椅子の開発に取り掛かります。これは当時のプラスチックの技術において画期的な取り組みでありました。
現行素材とは異なる、オリジナルに相応しい光沢のラッカー仕上げ
1967年に最初の150脚のパントンチェアが作られましたが、製造費の高騰と複雑な工程のため大量生産には至りませんでした。その後、度重なる試作の末、1968年にはFRP素材に鋳型を使って成型する製造方法により、現在の「Panton Chair Classoc(パントン チェア クラシック)」の量産が始まりましたが、依然として多くの手作業による仕上げが必要でした。さらに研究を続け、新しいプラスチック素材が解決策に繋がることを発見しましたが、強度に問題が生じ、1979年には一旦生産を中止せざるを得ませんでした。しかし、その後もパントンチェアへの情熱は冷めることなく、1990年にはヴィトラはより強度の高いポリウレタン素材を使用して再度生産を開始、1999年に素材をポリプロピレンに変更することにより、ついに現在のパントンチェアへとたどり着いたのです。
オリジナルの佇まいを現代技術で甦らせた歴史的に価値のある逸品
環境にも配慮したFRP素材と現代の最新技術によって、念願の復刻を果たしたクラシックモデルは、その堂々とした佇まいと艶やかな光沢を放つグロスラッカー仕上げ。マットなポリプロピレン製とは異なり依然として多くの手作業による仕上げが必要なモデルなので、価格こそ違っていますが、オリジナルの佇まいを現代技術で甦らせた歴史的に価値のある逸品となっています。
身体に添ったカーブと素材を細部まで追求した機能性
Panton Chair(パントンチェア)と言えば、彫刻のように美しい曲線のデザイン。一見、不安定な構造に思えるかも知れませんが、人の身体に添ったカーブと素材の特性を活かした構造によって細部まで追求した機能性を兼ね備えており、荷重によってチェア本体が適度に撓ることで、想像を超えた座り心地を提供してくれます。ダイニングとしてはもちろん、書斎やオフィスなど、どんな場所にも適応し、ホームからコントラクト、オブジェ的なアクセントにも対応するミッドセンチュリーを代表する名作椅子、それがパントンチェアです。