POINT
クリエイティブな精神で乗り越えた末に生まれたデザイン
ジャン・プルーヴェが、第二次世界大戦中の金属不足をクリエイティブな精神で乗り越えた末に生まれたデザイン、それがChaise Tout Bois(シェーズ トゥ ボワ )です。彼のキャリアの中で唯一の全て木製で作られたチェアである1941年のデザインを、2020年にVitra(ヴィトラ)社が復刻。自然素材である木材を用いている点だけでなく、状況に合わせた創意工夫という点においても、現代に蘇るに相応しい製品です。
プルーヴェの建築とも共通する彼の家具デザインの特徴
金属が不足していた第二次世界大戦中、ジャン・プルーヴェはそれに代わる解決策を編み出す必要がありました。Chaise Tout Bois = “オール ウッド チェア”というフランス語の名前の通り、彼は木材のみを用いて椅子を完成させました。ジャン・プルーヴェの代表作である「スタンダード」ととても良く似たデザインで、プルーヴェの建築とも共通する彼の家具デザインの特徴はこの椅子にも反映されています。後部フレームと座面が結合する点に最大の負荷重量がかかるため、後脚を兼ねた頑丈なフレームで補強し、全体への荷重を支えるという極めて合理的な考えに基づいています。ジャン・プルーヴェは構造的な強度、接合部、脚の位置や座面と背もたれの角度などのテストを重ね、戦時中にいくつかのプロトタイプを作りましたが、材料については入手可能な木材の中から選ばざるを得ませんでした。戦争が終わり、木材の十分な供給が整った段階で、オーク材を材料としてシェーズ トゥ ボワを製造することに決めました。フランスでは、船や大聖堂の屋根にオーク材が使われることが多く、椅子の材料としての硬さと強度は申し分ありません。また、個別の要望に応え、ダークステイン仕上げの椅子も製造されました。
住まいだけでなく高級レストランにも美しく溶け込む洗練されたチェア
1947年、プルーヴェは「Meubles de France」というコンペティションにシェーズトゥボワを出品し、大賞を受賞しました。テーマは、戦後社会の需要に合わせ、住まいに困る人たちや若くして家をもつ夫婦のための魅力的で高品質、大量生産可能な家具、というものでした。その後、一部金属のパーツを用いた組立式や、今日「スタンダード」として知られる金属のフレームに木製の背座を組み合わせたモデル「Metropole No.305」が作られました。今回ヴィトラから初めて復刻を果たすシェーズトゥボワは、ネジを使わない1941年のデザインに忠実に再現されていますが、大きさや座面の高さは現代の暮らしに合わせて調節されています。住まいだけでなく、高級レストランなどにも美しく溶け込む、洗練されたダイニングチェアです。また、名作「スタンダード」チェアとシート高や背座のカラーを合わせており、スタンダードSPの背座のカラーパレットとも相性がよく、それぞれを組み合わせて使用しても空間を美しく彩ります。