POINT
アルテックの伝統を重んじながらも、独自の美を見出したデザイン
カアリのデザインは、アルテックの考え方を尊重しながらも、非常に斬新です。つまり、歴代のアルテック製品に倣ったものではないデザインと言えます。ロナン & エルワン・ブルレック兄弟は多くのアイデアを考案しましたが、彼らの最初の提案で既に注目すべき、スマートなテーブルの脚のアイデアが飛び出していました。具体的には、サイズや形に関わらず様々な天板を支える脚のシステム構造です。カアリシリーズに共通するシンプルなスチール製部品とオーク材の部材と、丸い天板と組み合わせが美しく、そのシルエットは流れるようなラインを描きます。
湾曲したスチールレッグは、視覚的にリズム感をもたらし、空間に動きを与えます
この原理は非常にシンプルで、垂直方向にかかる重みが木製部品により支えられ、エレガントで薄い湾曲したスチール製の部品が斜め方向の支えとなります。頑丈な縦方向に支える木製部品とスチール製部品が全体のデザインに対して軽やかさをもたらし、独特の直線的なシルエットを形作ります。これらのテーブルのシルエットは視覚的にリズム感をもたらし、空間に動きを与えてくれます。一見、まったく新しい未来的なものを感じますが、実は新素材でも、革新技術が施されているという訳でもありません。木製部品とスチール製部品は、これまでアルテックで長年使われている素材です。ただ、このような形で2種類の素材が組み合わされたことは今回が初めてと言えます。壁付けタイプのコンソールは、設置する高さに応じて、デスクや棚として、様々な使い方ができます。コンソールを支えているのは、オーク材とスチールを組み合わせた部品で、オーク材はナチュラルとブラックラッカー仕上げの2種類を揃えています。経年変化を感じることができるリノリウム仕上げの天板は、使いこむ年月のなかで味わいを増していきます。
アアルトが開発したL - レッグと同様、重要視されるシステムという概念
それぞれ2つのサイズの長方形と円形テーブル以外に、カアリ・コレクションにはデスク、大小2種のサイズの壁付け棚、小サイズの円形壁付け棚があります。素材だけでなく、システムという概念もアルテックの歴史において非常に重要視されています。テーブル、椅子、スツール等の様々なものを支えるためにアアルトが開発したL -レッグのシステムと同様、ロナン & エルワン・ブルレックは木製部品とスチール製部品を組み合わせて円形テーブル用の脚、長方形テーブル用のシンメトリーな翼型をした脚、デスクを片側で支える翼型の脚を作りました。同様の原理は壁付け式のテーブルや棚にも適用されています。カアリは、アルテックの伝統を重んじながらも、独自の美を見出し、これまでのアルテックの名作とは別の存在感を放っているのです。